細かい部分は、哲学や心理学に詳しい方にお任せします。その上で、お役に立
てるかどうかは分かりませんが、私で可能な範囲内でお答えしておきたいと思い
ます。文章内の[[]]内の単語は、ウィキペディア日本語版に記事があります。
パターン認識自体は[[認知心理学]]の流れを汲んでいます。そして認知心理学
は[[ゲシュタルト心理学]]の流れを汲んでいます。さらに辿れば[[ヘルムホル
ツ]](スタブ)の知覚研究にまで遡ることができます。
ヴィトゲンシュタイン([[ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン]])がこれら
の研究にどこまで寄与したかは、私には分かりません。拙い英語と一部ドイツ語
でウィキペディアや他のサイトも検索してみましたが、有益な情報にはたどり着
けませんでした。
[[パターン認識]]の現在の記事は、主に工学的側面から書かれており、心理学
的側面における認識の過程は書かれていませんので、ここで概説します。人間が
画像を見て、それが何かを決定するプロセスは、簡単かつ乱暴に書くと、次のよ
うになります。記号は便宜的なものです。
画像の知覚 + スキーマ → パターン認識 → 知覚したものの決定
厳密にはもう少し違った形態になります。まず知覚ありきですが、これはボト
ムアップ的で、スキーマはトップダウン的な位置づけにあり、その中間にパター
ン認識が位置します。認識が成功したとき、知覚したものが何であるかが決定さ
れます。
先にリンクを張ったduck-rabbit画像は、いわゆる多義図形の一つで、主にバ
イアスがスキーマに与える影響、といったコンテクストで扱われます。
たとえば、ゲシュタルト心理学の英語版記事にEmergence(=出現)画像が
貼ってありますが、
http://en.wikipedia.org/wiki/Image:Emergence.jpg
これは、スキーマによる認識がなるべく失敗するように工夫されています(メタ
認知するならば、この解説自体もバイアスになり得ると言えます)。そして、認
識に失敗した後でも、あるヒントが与えられることで、即座にそのヒント通りの
ものが出現する(ように感じる)という好例です。
duck-rabbit画像も、前もって「アヒルの絵です」と言われればアヒルに見え
るでしょうし、「ウサギの絵です」と言われればウサギの絵に見えるでしょう。
これはバイアスの一番極端な例ですが、つまり人間がパターン認識を行う一連の
プロセスの中において、「スキーマはバイアスに左右されやすい」ということを
如実に示しています。
また、外部からの情報だけでなく、その人が持っている期待さえ、認知を左右
します。これは、UFOマニアの人(最近めっきり減りましたが)が、星(特に明
け・宵の明星)や航空機の灯火などをUFOと見間違える、といった事例で表れま
す。この意味で、期待もスキーマに含まれると言って良いでしょう。
少し整理します。人間は、全体を概観したりパーツなどから推測しようとした
りしても、それが何か識別できない場合、自分が持っている知識や過去の経験な
ど(=スキーマ)から演繹しようとします。失敗した場合(先のEmergence画像
を初見で認識できなかった場合が最たる例です)、その画像に関連する思考は
いったん停止します。この流れに明確な手順はありません。スキーマは各個人の
経験・知識などの総体であるため、規定はできません。
以上のことは、私の貧弱な知識・記憶、手元のわずかな蔵書、拙い英語・ドイ
ツ語での検索結果だけで書いていますので、きちんとしたことは確たる書籍・参
考書を参照されることをお勧めします。そして、その結果をウィキペディアに
フィードバックしていただけますと、非常に助かります。
この絵が著作切れであると言うことは、ビトケンシュタインの論文も英語版
で著作権切れでウィキにアップされているのでしょうか?
まず先に後段についてですが、ウィキペディアはあくまで百科事典です。論文
などの著作物そのものは、ウィキペディアではなくウィキソースで扱います。英
語版ウィキソースには、[[論理哲学論考]]がアップロードされています。
http://en.wikisource.org/wiki/Tractatus_Logico-Philosophicus
前段の、「ある著作物の著作権が切れているかどうか」は、即答できない複雑
な問題です。既にウィキペディア上に書かれていることも多くあります。詳しく
は[[Wikipedia:著作権]]をご覧ください。また、そこから辿れるいくつかの記
事、特に[[パブリックドメイン]]は有益でしょう。また、特に画像については、
アメリカ合衆国著作権法で特徴的な[[フェアユース]]についても注意を払う必要
があります。
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diagraph01 / Yoshizawa, Hideaki
mailto:diagraph01@nifty.com